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ピロリ菌について
ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染者は、感染していない人に比べて胃がんのリスクが20倍以上高いとされていますが、私自身はピロリ菌非感染者の胃がんは見たことがありません。
日本人の6000万人がピロリ菌に感染していると言われています。特に50代以上の方の感染率は60%以上と言われています。
ピロリ菌が感染するのは免疫が未熟な2才頃までが殆どであると考えられています。多くはピロリ菌感染している母親からの口移しによる感染が考えられていますが、衛生環境が大きく関わっており、下水設備の不十分な時代に幼少期を過ごした世代、およそ40歳以上の年代で感染率が高く、逆に30代以下では有意に感染率が少ないのです。
ピロリ菌が胃内に住みつくと、慢性胃炎を起こし、粘膜が赤く腫れ上がってきます。この時期を過ぎると、粘膜は薄くなってゆき、萎縮性胃炎という状態になります。その後胃の出口付近から粘膜が腸の粘膜に置き換わってゆくようになると(腸上皮化生)、いわゆる分化型胃がんのリスクが高くなるとされています。
一方、スキルスに代表される未分化型胃がんは、萎縮性胃炎、腸上皮化生から進展すると考えられている分化型胃がんとは異なり、慢性炎症に伴う遺伝子異常が考えられています。未分化型胃がんの前段階とされる、ひだ肥大型胃炎鳥肌胃炎の段階で除菌することが胃がん発症の予防につながると思われます。
ピロリ菌に感染すると、3%の方に胃潰瘍が、0.4%の方に胃がんが発症すると言われています。喫煙者、塩分摂取の多い方、ビタミンの摂取不足の方は胃がんのリスクが更に高くなりますので要注意です。
ピロリ菌の感染の有無を調べる方法は幾つかあります。簡便なのは、血液で抗体の有無を調べる方法です。呼気テスト、便中抗原検査、組織培養、迅速ウレアーゼテストなどもありますが、やや煩雑であったり、内視鏡検査が必要であったりします。これらの検査は、胃・十二指腸潰瘍もしくは慢性胃炎の診断がついている場合のみ保険診療が可能ですのでご注意下さい。単純にピロリ菌の有無を知りたい場合には自費診療扱いとなります。
日本人から胃がんを根絶するためには、ピロリ菌感染者をなくすことが最も重要であることは間違いありません。20歳の成人式を節目に採血を行い、ピロリ菌感染者は直ちに除菌をすることを勧めている方もいます。
血液検査で胃癌のハイリスク群をスクリーニングするペプシノゲン(PG) 法があります。一言で言えば、血液で胃粘膜の萎縮を評価する検査です。PG法は胃癌の一次スクリーニング検査で、胃癌集団検診(間接X線法)を補うもので、簡便かつ比較的低コストで実施できる長所があるため、一部の自治体、企業、人間ドックで導入されています。血液中のPGⅠ,PGⅡを測定することにより、間接的に胃粘膜の萎縮度を評価し、萎縮度の高い胃癌の高リスク群を見つけることが可能です。
【PG法の原理】
・健常な胃粘膜にピロリ菌が感染し、炎症が起きます。
・炎症が持続すると最終的に胃粘膜は萎縮の状態となります。
・血清PG値は、「炎症」でPGⅠ、PGⅡとも増加し、PGⅠ/Ⅱ比は低下します。
・「萎縮」になるとPGⅡは高くなりますが、PGⅠは低下し、 PGⅠ/Ⅱ比はいっそう低下します。
したがって、血清PGⅠ、PGⅡ、PGⅠ/Ⅱ比のそれぞれの値をみることで、胃粘膜の状態を推定することが可能です。このようにしてPG法は、血液検査で胃粘膜萎縮を推定し、胃がんのハイリスク例をスクリーニング出来ます。
ABC検診という言葉を聞いたことがあるでしょうか。要するに、胃がんのハイリスク者を絞って胃カメラによる精密検査を行おうとするもので、ピロリ菌(HP)とペプシノゲン(PG)の組み合わせによって判断されます。具体的には、
・A群(HP-PG-)は概ねピロリ菌未感染の人(一部除菌後の人が含まれます)、
・B群(HP+PG-)はピロリ菌感染に伴う胃粘膜炎症はあるが萎縮は軽い人、
・C群(HP+PG+)はピロリ菌感染に伴う萎縮の進行した人、と判断できます。
・D群(HP-PG+)は萎縮の高度進展に伴いピロリ菌が棲めなくなった状態で、胃がんの最もハイリスク群といえます。胃がん検診としては、

・A群→胃がん発生なし→精密検査不要
・B群→胃がん発生20%→2~3年毎の精密検査(ひだの太まりがある場合は1年毎)
・C&D群→胃がん発生80%→1年毎の精密検査
というような振り分けで、今後ABC検診が主流となるのではないかと思います。
注意しないといけないのは、除菌歴があると、HP抗体は1年ほどで陰性化し、PG値も改善するため、それまでB群やC群だった例がA群となる事例があることです。つまり、除菌後A群になった場合でも、感染の既往があるということは、胃がんのリスクは残っているということなので、定期的な胃カメラでのフォローが必要なのです。
除菌後に胃がんを発症した方のデータを見ると、除菌前の胃粘膜が中等度以上の萎縮をきたし、腸上皮化生を伴っていたという報告があります。すなわち、ピロリ菌感染後、①年数が経っている、②塩分摂取が多く、野菜や果物の摂取が少ない、などの条件で胃炎がどんどん進行して萎縮や腸上皮化生へと進展したためと考えられます。ですので、やはり若く、胃炎が進展していないうちに除菌するのが最善なのだと考えます。

A群 B群

HP(-) PG(-)

HP(+) PG(-)

D群 C群

HP(-) PG(+)

HP(+) PG(+)